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静かなる決意

長い間、ブログの更新をお休みしていました。お久しぶりです。

2018年は、年明けから環境も状況もめまぐるしく変わり、やっとやっと落ち着いたところです。

思い起こせば、このブログを始めたのは2016年の夏。

それから丸二年は自分の気持ちも、取り巻く環境も全てがめまぐるしかったなぁ…。

学生のときからなんとなく農業を志していて、大学でも動物や食品関係のことを学び、なんの疑問を持たずに実家へ戻り酪農をしていたけれど、ふと自分の将来に不安や疑問が沸いてきたらどうしようもなくなってしまって。

これは、そもそも農業を志したこと自体が親の影響とか、親が敷いたレールの上を走っていただけなのかもしれなくて、自分の本当にやりたい事をわかっていないだけなんじゃないか、なんて思うことが多々ありまして。

二年半前に思い切って、実家から、農業から、北海道から、日本から飛び出してみたんです。

果たして私は何がしたいのか、何が好きなのかを探すためにいろいろやってみた一年半のアメリカ生活のなかで得た答えは、やっぱり私は農業や食に興味があって、動物や自然が大好きで、生まれ育ったあの場所が理想の場所だという事でした。

去年の夏に日本へ帰国したけれど、北海道の牧場は第三者継承と言って、親族以外の人に土地や経営を移譲する準備が進められていて、自分が住んでいた家にはもう別の人が住んでいました。

大好きで理想の場所だと気づいたけれど、もう私の戻る場所ではなくなっていました。

仕方のないことです。自分で手放したのだから。

せめて大好きな犬と猫だけは離さないと決めて、共に兵庫県へと居場所を求めて旅立ちました。

兵庫県ではいろいろな方々にお世話になり迷惑をかけながら、これからどうなっていくのだろうと思っていた矢先、突然この実家の経営移譲の話がうまくいかなくなり、「帰ってこないか」と父に言われたのです。

これまでの流れをシンプルに受け止めれば、願ってもないチャンスのはずなのですが…

これが私の自信のなさから出てくる感情なのでしょうか、帰りたい気持ちと、ここで帰っていいのかという不安の狭間で悩みに悩みましたが、なんだかんだで帰ることに決めました。

そして今、北海道の生まれ育ったこの牧場で酪農をしています。

もちろん大好きな犬猫も一緒に。

Photo by Kayo

二年半の月日は、まるでなかったように同じ場所に立っているけれど、

二年半前の自分とは全く違う自分がここにいます。

母はよく、「隣の駅に行きたかったのに間違って違う電車に乗ってしまって、すごい遠回りして、今やっと隣の駅に着いた感じだ」と、電車の乗り間違いを後悔する表現をします。

でも私は、「やっと隣の駅に着いたのかもしれないけど、乗ってる電車は違うよ」って思います。

あの頃とは向かう未来が全然違う。

この間に経験した事も、沢山の人たちとの出逢いも、喜びも悲しみも辛い思いも、全て今の私を形作っている大切なものだから。

遠回りしたように感じて、実はとても必要だった二年半だったんだと今は心から思えるのです。

それでもたまに、やっぱり流れに流されてしまっただけなのかなぁと思うことがあったり、たまたま目の前に現れた『楽な道』を選んでしまったのかなぁとか思うこともあって。

いつまでたっても私はふにゃふにゃくよくよしてるよなー。。。

それがこの8月の始めに、いばや通信というブログを書かれている坂爪圭吾さんが、たまたま北海道にいらしていて、たまたま予定が空いているということで、牧場にお招きしてゆっくりお話する機会があったのです。彼は旅疲れもあって、そんなに深い話も長い話もせず、他愛のない話をして、牧場の自然や動物たちに癒されて帰って行きました。

後日、彼がブログに私のことを書いてくれていて。それだけでも彼のブログファンの私は感激だったのですが、私の印象をこう綴ってくれていました。

   *******

酪農家の方に呼ばれ、遠軽町(旧・白滝村)に足を運んだ。酪農家の方、と言っても年齢は若く私と同世代の女性M様だ。旅が好きだと話すM様は、これまで県外や海外で生活をしていた。が、色々と思うことがあり、実家の酪農を継ぐことを決めた。私は、不慣れながら搾乳を手伝う。重労働だ。Mさんは慣れた手つきで仕事を進める。私が「これからは北海道にいる予定ですか?」と尋ねると、彼女は「一生、いると思います」と爽やかに答えた。一生、という言葉を聞いた時に「ああ、このひとは腹を括ったんだな」と思った。誰かに頼まれたからではなく、自分の意思で、自分の生きる道を決めたのだ。そのひとなりの覚悟、そのひとなりの美学に触れたとき、私のこころは感動をする。ああ、格好いいひとだなと思う。

   *******

何気ない会話だったけれど、彼の目にはこう写っていたんだなと、ちょっとびっくりしました。

自分一人だと、どうしてもくよくよ悩んでしまいがちだけれど、他人に言われて、やっと自分でも自分の覚悟を認めることができました。

ああ、やっと、私はここでこれをやって生きていくと決めることができたんだなと。

私は勝手に、覚悟とは「よっしゃー!決めたぜ!」みたいに明確にするもんだと思っていたみたいです。そうじゃない覚悟もあるみたいです。

いつの間にか、私は静かに静かに、この道で生きていくことを決意したのでした。

水瓶座の満月の下より。

みなさまの未来も今日の月のように明るく照らされますように。

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